ESSAY BLOG

映画「フローズン・タイム」から連想した、キッチンに魅する静止した瞬間

不思議な力で惹きつける、静止した瞬間


【フローズン・タイム】

「あれ、なんかこの映画……違う。」

映画「フローズン・タイム」を観た時そう思った。

写真家の撮る映画は切り取られた一瞬一瞬の連続帯で、美しく全てが計算された世界に見える。ストーリーはもちろん、ファッションムービーとしてインテリアにしたい作品。流れるように映像を繋いで行くよりも製作には長い時間を要するのではないかとさえ思う。

恋人との破局が原因で眠れなくなった主人公。この世界に絶望し二週間も寝れていない。皮肉にも、彼の人生の時間は増えてしまった。時間を潰すために夜のスーパーで働き始める。そこで彼は超能力か幻想か、時間の概念がねじ曲がり、自分以外の世界を静止させられるようになる。

ヴォーグ誌やハーパーズ・バザー誌などのファッション雑誌で活躍するイングランド出身のフォトグラファー、ショーン・エリスが監督する作品。


 

映像作品に関わらず星の数ほど出会いに溢れた毎日の中に、一生に何度か、特別な瞬間がある。

美しい場面に、センスに、音色に、人の持つオーラに、目の奥に見る人格に、不思議な力に惹きつけられる。その出会いの瞬間はスローモーションとも「静止」とも感じる。

これはきっと、魅力に圧倒されて思考が追いつかない瞬間なのではないか?と思った。この貴重な瞬間をもっと体験していたいという強い思いと、普段の生活との間に感じた矛盾が生んだ時差かもしれない。

超能力者でなくても、時を止めてしまえるのだ。

そうして時が止まっているのをいいことに、頭の中でそのシーンの美しさに思いを巡らせる。どうにか自分の中に刻み残そうと無意識に集中している。これは人に伝えるのは至難の技だ。データとして誰かの脳に書き出したいくらい。

けれど、今の一般社会ではそんな技実は到底ない。だから私たちは、写真を撮り、映画を撮り、本や音楽、ファッションに変えて、自分が見たセンスオブワンダーを人に伝えようとする。

作品を世に出し続けさえすれば、同じ感覚を共有したいという人が自然と集まってくる。ある人にとってはそれが消費者になるし、仲間やファンになる。SNSや対面式の世界では、その数は「数字」として顕著に現れる。けれどそれにばかり気をとられると、「1」は人だったはずが、だんだんと10、100、1000と一塊の無機的な数字にしか感じられなくなってしまう。この数字がより多ければ経済的な豊かさは手に入れやすくなるのかもしれないけれど、気づかぬうちに数字に合わせた媚びたものばかりを世に出すようになってしまいかねない。

数字は生命ではないから、アンドロイドへのメッセージのように「ハイ、キレイトオモイマス__。」心にはとどまらず、通り抜けてしまうような気がしてしまう。そんなことを思った時、どうやらアーティストはもっと自分との対話に集中していいのだと思った。そうでなければ、いつか自分の世界が失明のように見えなくなって、辞めてしまう。

「ずっと、これを続けて生きたい。だって、時間を忘れてしまうほどに好きだから。」そんなことを思いながらキッチンで過ごし、そしてこの文章を綴った。

ちなみに、映画「フローズン・タイム」は主人公のナレーションでストーリーが進んで行く。私はナレーションの多い作品がとても好き。善も悪も自己の声が聞けるのは、勇気になり自分も相手も好きになる。

 

二度と体験できない氷の世界


偶然出来上がった氷の中には映画「フローズン・タイム」が広がっていた。

まだ固まりきらないうちに冷凍庫から出し衝撃を与えたのが、この静止した世界を残した。

そこにふと、目の前にWECKのガラス瓶があった。中身はちょうど3ヶ月前にダークローストのコーヒー豆漬けておいた蒸留酒のジンだ。蓋を開けると酸化して鼻から全身に伝わるような、どす黒い香りがした。「あっ、これ、眠れない日々のあの邪悪に苛まれる感じだ。」そう思って氷の上にワンショット。

アルコールの熱でゆっくりと溶け、じわりと美しい世界を侵食していった。

やがてどす黒い香りも、その色も、淡い色に変わり薄れていった。

映画「フローズン・タイム」を見ているような気持ちになった。

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「わたしがあの時見た、静止」

▷Editing photos in the VSCO: minekokoyama

Live, Love, Laugh…and Be”more HAPPY”

2018.08.06

Mineko Koyama

 

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