綺麗事は声に出していい。映画「ランドリー」から連想する料理のエッセイ。

 

 

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  • 『こういうの地球では「アイ」っていうんだよ。宇宙じゃ知らないけどね。』
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綺麗事は声に出していい


私は昔から、日曜日があまり好きじゃない。

日曜日って他の曜日にはない独特な空気が流れる気がして、それが妙に落ち着かないというか、誰かと居てもなんとなく孤独な気分になったり変な焦りを感じてしまう。

考えてみると、ふとした時にこれと似た様な孤独を感じることがあります。

価値観が合っていると感じた相手に夢を語ったり、純粋な気持ちや素直な愛情表現を口にしたら、相手の反応がキョトンとしてしまった時ありませんか?「あれ、もしかして違った?」みたいな。その時の空気って、小さいのにじわじわ痛みを伴うささくれみたいな脅威がありますよね。

それで次から保守的に空気を読んで、相手の価値観にあったような意見カードを出してしまったり。

そのカードを出した瞬間ものすごく落ち込む。そういう小さな積み重ねが癖になると今度は本当の気持ちをオープンにするのが怖くなっていつか心が死んでしまいます。

物書きやアーティスト、芸能関係者たちが堂々と物を申すのって凄くかっこいいですよね。彼らは炎上するのも人気の証と理解しているから自信を持って発言します。(炎上商法という場合もありますが。)多くの人はそういう姿に憧れるし、だからファンがつくんです。日常生活だって同じです。卑屈な意見やカッコつけた言葉で自分を守る人よりも堂々と綺麗事を言って、一つ一つのコミュニケーションを大切にできる人がかっこいい。

可笑しなことも、堂々と楽しそうに言われたら信じたくなります。価値観が合わないっていうのもコミュニケーションの面白さであってそれで仲良くなることもありますからね。気持ちは押し殺さないで声に出せば新たな出会いや発見に繋がるものです。

今日は、映画『ランドリー』からそういう孤独や恐怖を楽しいものに変える空想をしました。

 


『こういうの地球では「アイ」っていうんだよ。宇宙じゃ知らないけどね。』


【ランドリー】

 

主人公の青年テルはコインランドリーの見張り役。

テルは小さい時にマンホールに落ちて頭に傷がある。作中ダイレクトな表現はないけれど脳に障害がある彼は、それまでの記憶は全部忘れてしまったらしく二十歳とはいえ言動は小さな子供のよう。コインランドリーでの世界しか知らないから、まるで洗いたての洗濯物みたいに純粋無垢です。

 

朝一番、店の床を腰を入れて磨き、楽しそうに窓を拭き愛おしそうに金魚に餌をやる。彼にはこれがいつものルーティーン。

開店準備が完了したら外に籐の椅子を出して座る。あとは日が暮れるまでそこで洗濯物が盗まれないように見張っているのがテルの仕事です。

 

テルの職場である古いコインランドリーには、少し変わり者で社会にはみ出し気味な常連客が数人います。余計なことを何も言わない彼は、そんな常連客の話の聞き役でもある。

 

そこへ初めてやってきたのが“何かありそうな女の人”水絵。洗濯機に忘れた彼女のワンピースを届けた事をきっかけに、テルは外の世界へ飛び出すことになるのです。

彼女はテルと真逆で、心に傷を抱えて満たされない心を埋めるように、“盗み”を繰り返してきました。

 

忘れたいのに消えない記憶に苦しんで、孤独に身を置くことでどうにか自分を守っている。そんな水絵にとってテルと過ごす時間は、罪とか苦しい記憶を洗い流して浄化してくれるような優しいものでした。

 

エンドロールの後、二人が幸せに暮らせるのか知る由は無いけれど観客は確かな「アイ」を感じて、きっといつもより純粋な気持ちになってしまうに違いありません。

 


cinemanma!


 

「大きなガスタンク。僕はガスタンクを見ると少し怖くなる。ガスタンクは毎日少しずつ大きくなっている。いつか風船みたいにパンパンに膨らんで、しまいに破裂する。みんな吹き飛ばされて死んでしまう。」

-冒頭テルの台詞より-

 

 

全然違う二人に共通していたのは 「ガスタンクへの不安」でした。心に遣る瀬なさを抱えた自身とガスタンクとを重ねていたのかもしれません。

そんな水絵とテルがずっと幸せでいられるように。彼らの未来が笑顔で満たされますように、願いを込めてスープを作りました。

 


コールラビのポタージュスープ〜ランドリーの泡仕立て〜


 

 

コールラビという野菜はドイツ語でコール=キャベツ、ラビ=カブの意味があります。

 

その見た目はヘンテコで一見食べ方が分かりません。

 

これ、逆さまに見るとガスタンクに似てませんか?

 

食べるのは丸く膨らんだ茎の部分ですが、熟しすぎると固くて食べられなくなってしまうので小さいうちに収穫します。
見た目の奇抜さに反してとても優しい味です。
加熱するとほんのり甘みが増すので、豆乳を加えてシンプルに。しっかりと濾せば滑らかでテルの優しさ溢れる口調みたいに心地良くホッとする味になります。

 

洗濯するときの泡みたいに、ミルクをフッワフワに泡立ててカプチーノ仕立てにしてみました。飲み心地が軽やかで、気持ちまで軽くなりそう。

 

 

 

「想像して?」合言葉のようにリフレインされるこの台詞は二人にとって魔法の言葉。二人の未来を想像したらきっと優しい笑顔の穏やかな世界が広がるはず。

 

「想像して?破裂しそうなガスタンクなんてスープにしてさ、ふわふわの泡を沢山乗っけて食べちゃおうよ!そしたら怖いものなんてなくなるよ。」

 

そんな台詞が実際にありそう。

 

映画「ランドリー」を観たあなたもお腹が膨れていい気分になって、ハッピーな時を過ごせますように。

 

 

 

2017.06.11

Thank you
from Mineko Koyama

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